多出力電源の話
こんにちは、ノグエレです。
コロナウィルスによりオンライン授業が続き、また、入学したのに大学の敷地に一歩も踏み入れてないというのもあって、今は高校生気分で過ごしています。
今回は多出力電源についてちょっとだけ書きます。
多出力電源とは
この記事では文字通り、複数の電圧が出力できる電源を指します。
身近なものではPCの電源としてよく用いられるATX電源、ファクシミリ付き電話機や印刷機などの小規模な家電製品の電源ボードなどが挙げられます。あと、一昔前のワープロの電源にも多出力電源が用いられています。
多出力電源の回路
多出力にするためのいくつか回路を紹介します。
・巻線マシマシ方式 (仮名)
画像はフライバックコンバータで多出力にする回路です。帰還制御は一番重要な出力で行います。そうでない出力は巻き数によって電圧が決定します。
この方法は一番簡単で部品数も少なく済み、回路全体の電力変換効率にもほとんど影響しません。
しかし、トランスのボビンによって出力の数に制約があったり、帰還制御していない出力は負荷の大きさによって電圧の変動が起きてしまいます(クロスレギュレーションという)。なので帰還制御をしていない出力に大きな負荷をかけるのは向きませんし、小電力でも高精度が求められている回路の電源として用いるのは論外(?)です。
ただし三端子レギュレータなどの定電圧レギュレータを設ければ損失は大きくなりますが、出力が安定するので小電力の回路に十分使える電源となります。
ちなみに某電源↑も巻線マシマシ方式です。
・定電圧レギュレータ方式 (仮名)
これは通常の単出力のフライバックコンバータに定電圧レギュレータを外付けした感じです。これならクロスレギュレーションもありませんし、いくつでも出力の数を増やすことができますが、二次側の回路規模が大きくなるのが欠点です。また、定電圧レギュレータの損失や待機電力によって電源全体の電力の無駄が大きくなります。ただ、最近では三端子型の小型DC/DCコンバータが安価で手に入るようになったので、電力の無駄もなく、高品質の多出力電源が作りやすくなったように思えます。
この方式は電力規模に関わらず、今でも多くの電源に取り入れられています。あとで紹介する自作の多出力電源もこの方式です。
・マグアンプ方式 (仮名)
この方式はフォワードコンバータで使われています。可飽和リアクトルを用いて二次側で定電圧制御を行うのでクロスレギュレーションがなく、他の出力の負荷変動に対しても強いです。
こちらはフルマグアンプ回路のUSBポートです。USB同士を絶縁したいときに便利なものです。二次側で各ポートの電圧を制御しているので当然クロスレギュレーションは起こらず、安定した電力を供給することができます。
実際に多出力電源を作ってみた
一号機
令和元年の5月4日に作ったものです。
15V、12V、5V、3.3Vを取ることができます。
回路の実験の電源として使っていましたが、今は卓上スピーカアンプの電源として使っています。
二号機
令和2年6月18日に作ったものです。
15V、12V、-12Vを取ることができます。
三号機の練習用として制作したので観賞用に使っています。
三号機
令和2年6月27日に作ったものです。
15V、12V、5V、-12Vを取ることができます。正電源と負電源とは独立しており、正電源側にて帰還制御をしています。最近、私がオペアンプを用いた回路の実験をすることが多くなってきたので12Vと-12Vの出力を設けました。15V出力以外は三端子レギュレータを用いて電圧を安定させています。
基板は中国で発注するのがめんどくさくて時間の無駄だったので自分でエッチングして作りました。
多出力スイッチング電源が完成しました。 pic.twitter.com/qB0KlB9uRg
— ENgelou (@EN_gelou) 2020年6月27日
終わりに
電源作るの最高
(ここまで読んで下さりありがとうございました。)
Twitter→@EN_gelou (Noguchi Electric)